2.1回だけの支払先――講演を頼んだ大先生が個人番号の提示を拒否したら

▼内閣官房のマイナンバー特設ホームページが便利

「1回だけ」の支払先から個人番号をどう集めるかは悩ましい問題です。この場合、個人番号の提示を受けられないまま講演料を払っても、企業側にペナルティはありません。国税庁の公式サイトには、「個人番号の記載がないからといって、税務署が書類を受理しないことはありません」と記されています。

つまり、講演料の「支払調書」の個人番号記載箇所を空欄にして税務署に提出すればよいのですが、支払調書に個人番号を記載することは法律上の義務です。そこで実務的には、事前に「個人番号提供のお願い」の書類に「個人番号の記載は法律上の義務となっています」と記して先方に渡す。番号の提示を拒否された場合は、提供を求めた経緯などを記録しておく。それが税務署への説明材料となります。逆に、先方が責任を負うこともありません。マイナンバー法では個人番号を提供する義務がないからです。

予算の都合で「講演料」ではなく、少額の「お車代」として支払う場合もあるでしょう。年間の合計で5万円以下の場合、個人番号の記載が必要となる支払調書の提出義務はありません。

また、講演者が芸能人だった場合、同行したマネジャーが、代わりに個人番号提示を行うことも考えられます。マイナンバー法に基づくと、そのマネジャーに対して代理権の確認や代理人の身元(実在)確認を行うことになりそうです。講演者が社長の場合は、秘書が同行して本人の個人番号提示を行うことも考えられます。これらの場合、そのつど代理権や身元確認をしなければならないのか。それとも「使者」と考えていいのか。

こうした個別のケースについては、まだ明確な回答が出ておらず、実務で混乱が生じる場合は対応が変更されるケースもあります。お勧めしたいのは、監督官庁の公式サイトをこまめにチェックすることです。とくに内閣官房のマイナンバー特設ホームページには、関係官庁の特設サイトのリンクもあり便利です。