30万台中古車市場が厳しい。2010年の国内販売台数は、前年比2.8%減の393万3176台で、ここ10年ほど、ずっと前年割れが続く。その理由を、ガリバー自動車研究所所長の鈴木詳一氏は「都市部への人口集中による車離れや買い替えサイクルが長くなり、新車が売れず下取り中古車も減っているから」と説明する。
しかし、車が生活の足である東北地方の今回の大震災で様子が変わった。今年5月の販売台数は、前年同月比0.3%増の28万9464台。わずかながら、昨年11月以来、およそ半年ぶりに前年を上回った。特に被害が大きかった宮城県が約2.1倍の1万3587台、岩手県が約1.5倍の5087台、そして福島県が約1.2倍の7302台。実質的には、この3県がマーケットを牽引した。
この間の状況を鈴木氏は「津波で30万台の車が流された被災地に、大手メーカーなどが優先的に中古車を回したため。震災直後の3月末から4月にかけては20万~30万円台の価格帯にニーズが集中した。が、GW明けからは100万円前後の車も取引されている。被災地で人気があるのは、燃費のいいコンパクトカーや、車高が高く被災後の悪路にも強いSUVなど」と話す。
こうした東北での中古車の特需は、半年から1年ぐらいは続くものと予想される。仮設住宅に入居でき、義援金の支払いなどで当面の生活に目途がつけば、被災者の目も次は車に向いてくるからである。とはいえ、ほかの地域の販売台数は依然として前年割れとなっており、マーケットの苦戦は長引きそうな気配だ。
(ライヴ・アート=図版作成)