取材がはじまると、井上篤夫はおもむろに1本のカセットテープを取り出した。それは、彼が1987年に孫正義を4時間にわたってインタビューしたときのものだった。再生のボタンを押すと、30歳の孫の若々しい声が流れ出す。なかでも耳をとらえたのは「僕はナンバー1になるんです!」という一節だった。

「当時から孫さんは、口癖のようにそう言っていました。まだ日本ソフトバンクという社名の頃で、パソコンソフトの卸売りと雑誌の出版が主な業務だったはず。それなのに、いずれ自分たちがナンバー1を狙うべき分野や業種、その将来性などについて理路整然と熱っぽく語るのです。そんな彼の全身からはオーラが発せられていたように見えました」