永田 斉藤さんはメンバーと食事したこともあるんでしょう?
斉藤 うん。2003年だった。来日したとき、赤坂の、「ざくろ」っていう、しゃぶしゃぶの店で食事をしました。普通、彼らは絶対、出てこない。ところがあのときだけはなぜか、招待に応じてくれた。
永田 やっぱり斉藤さんだからですよ。
斉藤 いやいや。はっきりと覚えているけど、私の隣にキースが座り、正面がミック。私もいろいろなミュージシャンと食事しているけれど、あのときはどきどきしました。面白いなと感じたのは、ミックがいるときといないときで、メンバーの様子が変わること。ミックがいると、メンバーも緊張して、あまりしゃべらない。ところがミックが30分くらいで帰ってしまうと、またみんなでシャンパンを飲んで上機嫌(笑)に。やはりミックは確固たる存在感を持つリーダーなんです。彼がイニシアチブを持っていると感じました。
永田 うちの会社は今年で創業30周年になるんです。ロックやJ-POPのライブばかりをやってきて30年も仕事をすることができた。これは多少なりともストーンズの影響を受けています。だって、僕らが若かった頃はロックミュージシャンは30歳までの命だと言われていたのですから。
斉藤 そう。昔はロックなんてすぐにダメになるなんてことも言われた。ところが、気づいてみたら音楽界で長くやっているミュージシャンにはロックの人が大勢いる。ストーンズに限らず、エリック・クラプトン、レッド・ツェッペリン、ポール・マッカートニー、ザ・フー……。日本でも、矢沢(永吉)さん、氷室(京介)さん、B'z……。みんな長くやっている。
永田 確かに。音楽ビジネスを巨大化させ、長持ちさせているのはロックですよ。そうそう、ストーンズの話にちょっと関連したことですけれど、創業30周年記念に、うちでは08年、実施するコンサートのタイトルをストーンズの曲名にしたんです。例えば木村カエラのライブは「エモーショナル・レスキュー」で、ジャズの上原ひろみは「アウト・オブ・コントロール」といったように。
斉藤 永田さんがやっているコンサートビジネスも、以前は若い人がターゲットだった。でも、今では団塊の世代を対象にしたライブも増えているのでしょう。
永田 はい、(井上)陽水さんやユーミンのライブにもそういう年齢層が多くなりました。もっと上の年齢の方も来ています。観客席を見ていると、60代、70代でもほんとに若い。手前勝手ですけれど、音楽に触れている人は老け込まないんじゃないでしょうか。
斉藤 社会的には60歳というとひとつの節目だけれど、今の日本の60代は見た目もセンスも若いもの。
永田 ストーンズを見ていると、年齢なんてまるで考えてないように見えますね。
斉藤 音楽をやったり、聴いたりすることが精神にいい影響を与えてるんじゃないかなあ。
永田 そうですよ。僕らもミックを見習って「生涯現役」の精神で、これからの厳しい時代に立ち向かっていかないと(笑)。