斉藤正明●M-site代表
東芝EMI社長時代はストーンズ、ビートルズ、ユーミン、宇多田ヒカル等を擁して業界をリード。現在はコンサルティング会社M-site社長。61歳。

永田友純●ホットスタッフ・プロモーション代表取締役
ホットスタッフはロック、J-POPのコンサートを手がけるプロモーターの業界大手。全国コンサートツアー事業者協会の会長を長く務めた。53歳。


永田 僕がストーンズを好きになったきっかけは、1965年、小学校5年のときに聴いた「テル・ミー」(発売は64年)です。以来ファンになりほとんどの曲を聴いていますが、名曲「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ(涙あふれて)」(65年)に代表されるように曲も詞も凄い。背景に私生活が漂い、エピソードがあり、そういった彼らの生き方にも興味があります。
僕は23歳で会社を始めたのですが、社名を付けるときも迷わずストーンズの曲から付けたくらいです。

斉藤 私は大学を卒業して東芝EMIに入社しました。イギリスのEMIはザ・ビートルズを発掘したレコード会社です。ですから、私の仕事上の縁としてはストーンズよりザ・ビートルズのほうが長かった。ポール・マッカートニーとは何回か会う機会もありました。ストーンズとは彼らがヴァージンレーベルに移籍し、東芝EMIが日本での担当になってからです。私はザ・ビートルズとストーンズを対比しながら聴いていました。

永田 デビューした頃、ストーンズが何者なのかわからない人が多かった。ビートルズのほうが親しみやすかったのでしょう。

斉藤 ファンの層も違います。ザ・ビートルズファンは一般的な音楽好きで、老若男女に受ける。一方、ストーンズのファンはマニアックというか、ロックの神髄を知っていると自負する人たちでした。そして、男性ファンが多かったのもストーンズ。

永田 僕はミックやチャーリー・ワッツが好きで、それは、それまでロックアーティストには感じられなかったセンシティブな人間臭さがあったから。自分たちが作っているというのがはっきりとしていましたね。

斉藤 レコードセールスでいえばそれはザ・ビートルズのほうが多い。しかし、私はストーンズの魅力はライブにあると思う。彼らはやはりライブバンドですよ。しかも、解散することなく、結成以来、ずっとステージに立ち続けている。そんなバンドはいない。

永田 そうですね。その通りだと思います。今度の映画(「シャイン・ア・ライト」)を観ればわかるけれど、エネルギッシュで、ステージ上で、あれだけ動いても息切れひとつしていない。東京で初めてコンサートを観たとき、彼らは50代。これは日本のロックミュージシャンに、オレたちも頑張ろうという気にさせたんじゃないか。

斉藤 私は何度か彼らの来日公演に立ち会ったことがあるのですが、ストーンズくらいになると、公演に何百名ものスタッフがついてくるんです。まるでひとつの企業がまるごと移動してくるようなもの……。彼らの様子を間近で見ていると、曲選びからステージの演出にいたるまで、最終のデシジョンはすべてミックが下す。他のメンバーはミックの意見に対しては異論をさしはさまない。ミックがリーダーであり、バンドの方向性を決める役なんです。

永田 それはステージを見ているとわかりますね。オーラが違う。

斉藤 そう。ストーンズはツアーの発表をするときでもヘリコプターからメンバーが現れるといった演出をするでしょう。あれもミックのアイデアと思いますよ。

(文・構成/野地秩嘉 撮影/尾関裕士)