電気事業を3本目の柱に育てる

社長室に飾ってある2匹のカエルたち。

もう1つの変革が、電力会社に電気を売る電力供給事業の拡大です。製鉄所を稼働させる電気を得るために電力会社と組む方法もありますが、当社は歴史的にすべて自家発電でまかなってきました。だからある程度は電力をつくるノウハウがあったわけです。

電力供給事業は神戸製鋼所らしくないという意見もありました。ですが、やはり他社にはないものを持たないと生き残っていけません。当社は、1995年の電気事業法改正を受け、神戸製鉄所の既存インフラや製鉄事業での自家発電のノウハウなどを最大限に活用した新規事業として、140万キロワットの石炭火力発電所を建設し、2002年度より電力卸供給事業(IPP)を開始しています。また、2017年を目処とした神戸製鉄所の上工程休止に伴い、高炉を解体する跡地に130万キロワットの石炭火力発電所を増設する予定です。21年からの稼働を目標に計画を進め、生み出した電力は関西電力に売ります。

また、栃木県真岡市のアルミ生産の拠点には、天然ガスを燃料に120万キロワットの火力発電所をつくる計画があります。この計画に対しても、もっと小規模の発電所から始めたらどうかという声がありました。けれど、やるからにはリスクを取ってある程度の規模でスタートしないと安定収益になりません。こちらは19年から稼働し、東京ガスに売電する予定です。

新しい火力発電所ができれば、電気事業は鉄やアルミなどの「素材系」、産業機械や建設機械などの「機械系」につづく、第3の事業の柱になり、神戸製鋼所の複合経営を進化させていくと思います。

110年の歴史のある会社です。それは相当な重みであり、変えることには大きなプレッシャーが生じます。当然、それに抗って仕事をしているわけですから、ストレスも感じます。ゴルフが趣味という経営者が多いですが、仕事がらみのこともあるので余計にストレスが溜まってしまいます(笑)。ゴルフは趣味にはならないので、私の場合は、自宅の狭い庭でバラをつくっています。

バラ栽培というのは非常に手がかかります。水を与える回数も多いし、肥料もたくさん入れなければいけません。いつも剪定しないとよい花が咲きません。休日になると作業服を着て、2~3時間、手入れに熱中します。それが終わるとシャワーを浴びてビールを飲み昼寝をします。それで1週間がリセットされるのです。

バラを育てていて、経営との共通点に気づくことがあります。バラは大きなきれいな花を咲かせている間に、見えない下のほうできちんと次の幹を育てているのです。経営も同じで、ある事業が成功している間に、新たなものにチャレンジし、肥料を与え、育てていかなければならない。そう考えています。

神戸製鋼所社長 川崎博也
1954年、和歌山県生まれ。80年京都大学大学院工学研究科修了、同年神戸製鋼所入社。2001年IPP本部建設部長、02年加古川製鉄所設備部長、07年執行役員、10年常務執行役員、12年専務執行役員を経て、13年代表取締役社長。
(構成=Top Communication 撮影=向井 渉)
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