理念より「お金」を優先する企業の「論理」

一方、売上や利益の数字は「目標」です。「目的」に沿って良い商品やサービスを提供し、働く人が活き活きと働いていれば、売上や利益がついてくるはずです。言い換えれば、売上や利益は先ほど挙げた「目的」の達成を目指した結果や評価なのです。

ところが、売上や利益に追いまくられる会社は、本来は目標であるべきものが、目的化してしまっているのです。経営者が目的に沿って目標を立てるという基本的なことを理解していれば、目標が目的化することは起こりません。もっと良い商品、他社がまねをできないような商品を提供し、働く人を活かし幸せに働いてもらうことで、売上や利益を伸ばそうと考えるはずです。

不正会計をした東芝の経営者は「3日で120億円の利益をあげよ」などと部下に命令したといわれていますが、それは本来の目的を大きく逸脱した行為といわざるをえません。働く人に無理強いし、不正行為を誘発するようなことしてまで、売上高、利益を追求するのは明らかに理念に反することであるはずです。

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東芝の公式サイトに掲載されている経営理念

参考までに、東芝グループの経営理念を調べると、(1)人(顧客、株主、従業員)を大切にします、(2)豊かな価値を創造します、(3)社会に貢献します、の3つ。スローガンは「人と、地球の、明日のために。」で、これらを事業活動の中で実現するよう努めることが「私たちのCSR(企業の社会的責任)であると考えています」でした。実に素晴らしい「目的」の設定です。

しかし、実際は目的と目標の区別も、目的と目標の優先順位も明確でなかったということかもしれません(*編集部注:東洋ゴム工業の経営理念「独自の技術を核として新たな価値を創造し、人と社会に求められる企業であり続ける」。旭化成グループの経営理念「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します」)。