企業にとっては“お荷物”にすぎない
10月からマイナンバーの配布が始まったが、混乱しているのは個人より企業のほうだろう。企業は、従業員の給与に関する法定調書を税務署に提出したり、各種社会保障の手続きをするために、従業員と扶養家族のマイナンバーを取り扱う必要がある。
厄介なのは、漏えい対策だ。マイナンバーは個人情報の一種であり、取り扱いは個人情報保護法の規制を受ける。ただ、名前や住所といった他の個人情報と同列ではない。マイナンバーは各個人情報を結びつける「索引性」を持っているため、悪用されると被害が甚大になるおそれがある。そこで個人情報保護法だけでなく、マイナンバー法によって一段強い保護措置が規定されている。これまで以上の対策を求められる企業から見れば、爆弾を新たに抱え込まされたようなものだ。
一方、マイナンバー制度の開始で企業にメリットはあるのか。せっかくだから社員IDとしても活用したいと考える会社があるかもしれないが、これはアウト。水町雅子弁護士は次のように解説する。
「マイナンバーの利用は税、社会保障、災害対策分野に限られます。社員番号のように使って、人事査定など関係ない情報と紐づけると違法です」
社員IDとしての活用も難しいとなると、企業にとってマイナンバー導入のメリットはないに等しい。