「がんの話題」はタブーではない理由

ただ、定期的に母親の病気のことについて、娘と話す機会を設けようとするのですが、いつも「わかっている」と私を制して、いろいろと話しをされるのを嫌がるため、見た目よりもショックを受けているのかもしれません。妻も自分の病気のことで弱音を吐くことは皆無に近く、かなり我慢強いといえるので、妻に似たのかもしれません。

これはいいのかどうかわかりませんが、わが家では「がんの話題」はタブーではありません。妻が娘と一緒にがんをテーマにしたテレビ番組やドラマを見るのはめずらしいことではなく、乳がんブログ村のオフ会に娘を連れていくこともあります。今年の8月には、この集まりのメンバーが亡くなったため、妻が葬式にも娘を連れていったくらいです。

娘は母親の病気のことを冷静に受け止めているのか、がんに関することに接しても、動揺することはありません。母親にアドバイスすることもあるくらいです。だから、私たち夫婦のやり方が「正しい」「安心」というわけではありませんが、母親の病気ときちんと対峙させるのがわが家流とはいえます。

ただ、母親の具合が悪いのに、手伝いをしないときは、私がきつく叱ることがあります。「ママが死んでしまったらどうする」というと、娘は悲しそうに顔を歪ませますが、それで落ち込むわけではなく、反省して手伝いをしてくれます。

私のような言い方をするのは、ひどいに違いありません。妻からも「私の命を盾に叱らないほうがいい」と注意されます。ただ、娘が母親の病気を冷静に捉えているというよりは、どこか「ママは死なない」という絶対的な安心感のようなものがあるように思えることがあるのです。

そのため、母親にもしものことがあったら、娘のショックは普通の子どもよりも大きいのではないか、と心配になることがあります。現実をきちんと把握しているのだろうか、と思えて仕方がなくなるのです。これでは娘にも悔いが残るのではないかと思い、ついきつく叱ってしまうことがあるのです。

私も娘も、妻が長生きしてくれるのを強く願っています。妻ががんになったからこそ痛感したことですが、妻は私と娘にとって、なくてはならない存在なのです。妻がいなければ、家族がまとまらないとさえ思っています。ですから妻には、「家族に迷惑をかけているなんて思わず、しぶとく生き続けてくれ」といっています。家族3人が一緒にいる1日1日が貴重で、とにかく悔いを残したくない、と思っているのです。

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