「傾き」を避けるには築後10年は様子見

杭工事を請け負った旭化成建材は、過去10年あまりの3040の物件について社内調査を行うとしています(※2)。3040の物件すべての現地調査は事実上不可能です。社内調査を進めるなかで、施工データの偽装があった場合に現地調査を行うことになるでしょう。現地調査には時間がかかります。「LaLa横浜」のような大きな建物では半年から1年は必要です。問題が収束するには少なくともあと数年はかかるでしょう。

今回のようなトラブルに巻き込まれないためには、どんな点に注意すべきなのでしょうか。残念ながら、今回の問題を完全に回避するのは困難です。唯一の対策は、新築マンションを購入しないこと。中古であれば、すでに不具合が発覚していることが多いからです。しかし中古マンションでも安心はできません。「LaLa横浜」は2007年に竣工して、去年の秋から徐々に傾きがみつかりました。数年をかけてじわじわと傾斜しており、これを避けるには「築後10年は様子をみるべき」ということになります。

いずれにしても「新築マンションは避けるべきだ」という結論は過剰反応でしょう。施工不良は、様々なリスクのひとつ。現在、話題になっているからといって、ひとつのリスクだけを大げさに評価するのは合理的とはいえません。

重要なことは建物の不具合をみつけたときに、それが根本的な施工不良かどうかを早期に判断することです。根本的な施工不良がある場合には、不具合は必ず複数箇所に広がっています。特に亀裂や水漏れが複数の住戸でみつかった場合には、建物の歪みが原因であることが多い。不具合を見つけたときには、マンションの管理組合に相談して、ほかの住戸の状況を確認してください。複数の住戸で兆候が確認できた場合は、専門家の調査が必要です。

※1:法律制定の目的について、国交省は「(1)住宅の品質確保の促進、(2)住宅購入者等の利益の保護、(3)住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決」を図ることとしている。
※2:旭化成建材では、杭工事の施工不具合について、特設の問い合わせ窓口を用意している。電話番号は、0120-901-557(受付時間9:00~21:00)。なお個別の物件の情報については「プライバシー保護の観点から回答を控える」としている。

(呉 承鎬=構成)
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