話の内容は同じでも現場によって事例、ストーリーが違う

どんなに素晴らしい戦略を構築しても、社員がそれらを共有し、行動してくれなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。そうならないよう私は、「フェース・トゥ・フェースで具体的に話す」「相手の聞きたいことの中に自分の言いたいことをまぶして伝える」の2点に気をつけています。

ここでも大事なのは、現場に足を運ぶこと。それもただ行くのではなく、事前に工場長や支店長に、そこで働く人たちが会社の方針のどの部分に疑問や懸念を抱いているか調査してもらい、この情報を踏まえて話を構築するのです。だから、私の話の内容は同じでも、現場によって事例やストーリーが違うということになります。

それから、話が抽象論で終始しては、聞き手の心に響きませんが、だからといってディテールまで踏み込んで話すと、具体的な内容が社外に流出するリスクも高まります。しかし、たとえそうだとしても、社員が会社の戦略を深く理解して、「自分の仕事にはこういう意味がある」と認識してくれなければ、社員の仕事の生産性は上がらないでしょう。

わかりやすいようにと卑近な事例に落とし込めば、聞く側はイメージしやすくなるものの、今度は解釈の幅が狭まって、誤解を招く恐れがあります。それでも、私は社員の腑に落ちるような具体的な説明を展開したいと思っています。誤解が生まれた場合でも、後で訂正すればいいだけの話ですから。