利便性向上で個人情報は丸裸にされる

軽減税率は年末に向けた来年度税制改正の与党協議で最大の焦点になるとしても、財務省案が仮に採用されると、少額の買い物の際でもマイナンバーカードを持ち歩き、カードリーダーにかざしポイントが蓄積されなければ、還付金は発生しない。しかも、買い物した店で必ず、「マイナンバーカードはお持ちですか?」と尋ねられるのは間違いなく、これには、多くの人がうっとうしい、うんざりと感じるはずだ。

こんな光景は既に、ポイントカードを巡る現場で日常化している。大手コンビニエンスストア「ファミリーマート」のチェーン店のレジで精算する際、愛想笑いの店員に「『Tポイントカード』はお持ちですか?」とマニュアル通りに100%尋ねられる。このファミマの応対がインターネット上などで「うざい」と、極めて不評を買っており、マイナンバーカードもその二の舞になりかねない。

しかし、財務省案の難点はそればかりでない。還付請求の煩わしさや事業者によるカードリーダー導入の負担、カード紛失への懸念や高齢者に不向きだとの指摘もある。さらに、財務省案は消費増税時の軽減税率への対応というより、マイナンバーカードの普及により個人の所得情報の把握を強化し、税収増につなげる狙いなことは容易に想像がつく。

一方、先の通常国会で安全保障関連法案の審議に隠れるように、マイナンバーが銀行の預金口座への任意での適用や予防接種などの健康履歴にも利用できる改正マイナンバー法が9月3日の衆院本会議で可決、成立した。これにより、税と社会保障に限らず、マイナンバー制度で把握できる個人情報は確実に拡大する。

さらに、NHKの籾井勝人会長は10月1日の記者会見で、受信契約活動への制度活用を「積極的に検討したい」と述べるなど、個人情報が筒抜けで国などに把握される可能性は強まる一方だ。「国民の利便性向上」を隠れ蓑に、マイナンバー制度で個人が「丸裸」にされてはかなわない。そんな懸念が一向に拭えないのも、疑いのない事実だ。

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