がんについて正しい知識を持つことが大切
実は、私は父と妻をがんで亡くしています。ですから、がんを治したいという気持ちを人一倍強く持っていますし、普通の医師にも増して患者さんの不安や、ご家族の悩みも理解しているつもりです。その不安や悩みを少しでも減らしたい。心からそう思っています。
特に患者さんの不安は、心理的に不安定な状態になるだけでなく、治療効果を下げることにまでつながってしまいます。
不安を減らすために、もっとも大切なこと。それはがんについて正しい知識を持つことです。そのためにも、できるだけ多くの人に、がんについての正しい知識を持っていただきたいと考え本も執筆しました。
患者さんや、そのご家族が、がんの基本的な知識を正しく俯瞰的に得ることは、実際には容易ではありません。
なぜなら、ほとんどの医師は非常に忙しく、患者さんの疑問に十分答える時間がないからです。
「診察を待っている患者さんが何十人もいる中で、1人の患者に“がんのなりたち”から説明している時間はない」というのが医師たちの本音だと思います。
その結果、患者は、診断や治療を受けているにもかかわらず、いつまでたってもがんという病気について知らないことだらけです。「がんのステージはいくつで、こんな治療をします。副作用や合併症はこういうものです」というような当面のことは聞けても、がんについての根本的な質問はしにくいものです。根本的な質問とは、
がんとは何か?
なぜ、がんができるのか?
がんのどこが怖いのか?
というような、いわば素朴な疑問です。この基本的なところがわからないと、どんな治療法を選ぶにせよ、心からの納得は得られません。
まずは、がんについて、しっかり知る。これが大切なのです。
※本連載は書籍『がんを告知されたら読む本』(谷川啓司著)からの抜粋です。