香川と岡山を放映エリアとするKSB瀬戸内海放送は、加藤宏一郎社長自らがエクセルの講座を受けたことがきっかけで、エクセル活用推進に取り組んだ。加藤社長が「エクセルを扱うことで、経営的な視点が鍛えられる」と感じたためだ。
エクセルの専門家に依頼して高松の本社で出張講座を行い、社員12人が受講した。そのうちの1人である山口太郎経営管理ユニットグループリーダーが、同じチームのメンバーに活用を勧めるなどしたことで、エクセル活用の輪が拡大したという。
現在ではエクセルを業務のいたるところで活用するようになった。山口氏はエクセルを給与計算、資産管理、売り上げ管理、視聴率分析などに使用しており、作業時間は1日平均4時間に上る。エクセルを毛嫌いしていたある女性社員は、「180度考えが変わってエクセルが好きになり、今ではVLOOKUPを使いこなしている」(加藤社長)。
今回紹介した事例で、各社で方針が分かれているのが、エクセルを使ったシステムを自社でどこまで作るかという部分だ。
『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』の著者で、エクセルをビジネスに生かすコンサルティングやセミナーを手掛けるすごい改善の吉田拳代表は、「自社で考えられる部分は自力でやるべきだが、エクセルを使ったシステム作り自体は本業とは関係ない。予算が許すなら外部と協力して開発したほうが効率いい」と指摘する。
ただし、「自社でシステムを開発しないとしても、エクセルを正しく理解することは非常に重要」(吉田氏)。エクセルを扱うことで、「予算や実績の数字をどう読むか、損益分岐点はどこか、などの指標に強くなり責任感が生まれる。社員にこうした自覚が生まれることによる効果は大きい」(同)。
(市来朋久、倉場義晴(KSB瀬戸内海放送)=撮影)