経済的に有利な日本は「戦後処理」が楽だった
なぜ日本ばかりが戦争責任を問われ続けるのか。問いを解く鍵は、日本と関係各国のパワーバランスの変化です。
たとえば韓国の場合、日韓基本条約が締結された1965年当時、韓国の1人当たり名目GDPは100米ドルを超える程度で、日本の約7分の1でした。しかし80年代に経済成長を遂げた韓国は、2014年には2万7970ドルとなり、日本の3万6194ドルに迫っています。また、韓国における日本の貿易シェアは、65年から73年までは40%程度を占めていましたが、現在の最大の貿易相手国は中国で、日本は輸出・輸入ともに3位に後退。経済だけでなく、軍事費も急速に日本の水準に近づき、日韓の軍事的格差は消滅しつつあります。
中国の軍事費は現在、約2160億ドルと、日本の5倍近くに上っています。経済成長はいうまでもなく、日本の輸入相手国として見た場合、90年代は10位以下でしたが、現在は22.3%を占める圧倒的な1位です。
このように日本と中韓の経済的・軍事的格差が縮小、あるいは逆転したことは明らかです。特に日韓の間のように旧植民地国が旧宗主国の経済水準にこれほど早く追いついた事例は、世界的にも珍しい。中韓の日本への依存度が減り、経済的に自立したことから、日本の「歴史認識」を強い姿勢で問い質せるようになったといえます。
その一方で、同じ敗戦国であるドイツに対して、今年2月にギリシャのチプラス政権が賠償請求の検討を表明しましたが、ドイツは「法的、政治的に解決された」との立場を崩さず、国際的にも支持されています。この違いは何か。理解するためには、日本の戦後処理の特殊性を知る必要があります。