どのようなビジネスも必ずピークアウトする
日本電産の事業構造はいま、車載用などの伸びにより「四本柱」に近づいてきた。15年度には売上高と営業利益の双方で、車載用および家電・商業・産業用モーターの合計が、精密小型モーターを逆転する見通しだ。車載用などの先には、電車、船舶、航空機といった、未踏の分野が待っている。
こうした変化は、将来にわたって絶え間なく続くだろう。どの事業もいつか必ずピークアウトするからだ。事業や商品はもとより、国家、企業、個人もすべて、どこかでピークを迎え衰退する。大きくいえばこれが私の歴史観である。
一つの事業が上向きになり、儲けを出し始めたらそれだけで慢心してしまい、立派な家を建て、高級外車を乗り回す人がいる。ピークアウトを警戒せず、したがって新しい事業展開を怠り、余裕資金を贅沢のために使ってしまう。これは失敗する経営者のパターンである。
だから私は贅沢をしない。家内も同じ考えで、家政婦を頼むでもなく一人で家庭を切り盛りしている。そればかりか、日本電産が大会社に成長してからも「倒産するのではないか」と心配し、子供の教育資金だけは会社の取引銀行とは別の銀行に預けていた。万一、個人保証を求められても、その分だけは手放さないで済むからだ。
「いまのような順境は絶対に続かない」
この感覚が私たちの中にはある。伸びるときがあれば縮むときがある。縮んだときに、どれくらい持ちこたえられるかが企業の命運を左右する。
トヨタ自動車の基礎を築いた豊田英二さんは会長時代に、2兆円もの内部留保を何に使うのかと問われて、こう答えたという。
「どんな危機が来ても4年間は持ちこたえられるようにするためです」
あの大トヨタもまったく慢心していないのだ。こうした慎重さは、永続する企業の一つの条件ではないだろうか。