また、中国人上司や部下との日々の仕事も、相手を理解することで知恵が生まれ、スムーズに進めることができるようになる。中国人は面子を大切にするので、部下を叱る際には人前で行わないことは、もはや常識だ。もちろん、中国人の上司の場合も同じこと。
「中国企業の場合、会議で上司が右といったら絶対に右。その場で反対意見を述べるような部下がいたら、自分の面子を潰した憎い敵ということになって、早晩どこかでクビを切られることになるだろう」と、北京で日系企業の相談にのるコンサルタントは話す。
しかし、上司が間違った判断をしている場合には、それを正さなくてはならない。そうしたケースでは、今度は上司が相手の面子を立てなくてはいけない人物を探してきて活用する。
たとえば、中国は権力社会で“お上”のいうことには極端に弱い。そこで、事業を管轄する役所に出向いて相談を行い、自分が考えているような意見を引き出す。そして上司に「お役所の○○さんがこういっていました」とやんわりと伝える。当然、上司はその意見を無視できなくなる。時にはこうした虎の威を借りるような奇策を駆使することも大切になってくるのだ。
これまで日本は閉ざされた社会であり、欧米企業に買収されるというケースもそう多くはなかった。それだけに中国企業に買収されたというと、神経質にとらえがちになってしまう傾向が強い。しかし、閉塞した状況を打破するため、欧米だけでなく中国をはじめとする新興国に対しても、日本は広く門戸を開いていく必要がある。
「中国資本という、わかっているようで実は全くわかっていない異物を、うまく利用するしたたかさが日本企業や日本人ビジネスマンにはほしい。それには、中国人に対して時代遅れの偏見や、13億の中国人を画一化したイメージでとらえるという愚かな態度を捨て去り、まっさらな気持ちで関係を築くことが大切だ」
この中国系企業で働く日本人ビジネスマンの言葉に、耳を傾ける必要があるのかもしれない。翻ってみれば、明治維新以降の日本は西欧の文化やビジネスの仕方を柔軟に取り入れ、殖産興業に成功した。そのDNAを今度は中国など新興国との間で活かす時代が訪れているのではないだろうか。