副交感神経を刺激して疲労回復促進

リカバリーウェアの効果が単なるユーザの思い込みではない証拠に、ベネクスでは研究機関と提携して実証実験を行っている。その結果、リカバリーウェアによって白血球中の免疫細胞が増加して、肉体疲労の改善がされ、唾液中のストレス物質が減少することで、精神疲労の回復効果も見られた。さらに、筋肉の疲労改善も証明されている。

そもそも、なぜ疲労回復が遅れるかと言えば、その原因は自律神経の乱れだ。自律神経は交感神経と副交感神経の2つからなっており、人はこのバランスによって疲労が回復し、健康を保っている。交感神経は昼間など活動中に働き、心拍数や血圧を上げ、血管を狭め、筋肉は収縮する。一方、副交感神経は睡眠中に優位になり、心拍数や血圧を下げ、血管を広げ、筋肉を弛緩させて、昼間の疲れを回復させる。

ところが、高齢化やストレス、睡眠不足などにより、このバランスが崩れて、睡眠中も副交感神経がうまく機能しなくなる。その結果、翌日も疲れが残ってしまうわけだ。

リカバリーウェアは副交感神経を刺激して機能させる効果を持っている。実証実験でも副交感神経の変化の平均値は、未着用状態よりも2倍ほど向上している。

着るだけで疲労回復を促すリカバリーウエア。

副交感神経を刺激する仕組みは、繊維に練り込まれた鉱物から発せられる微弱な電磁波である。ナノレベルのサイズまで粉体化したプラチナおよび数十種類の鉱物を一定割合で配合した特殊素材を「PHT」(プラチナ・ハーモナイズド・テクノロジー)と命名したが、このPHTから発せられる特定周波の電磁波が効率的に働くのだという。

「開発当時は、ナノ微粒子で自律神経に影響を与えるという発想はありませんでした。私は東京工業大学の先生方などに協力して頂きながら、ナノプラチナの効果を見つけ出し、それにいろいろな鉱物を組み合わせることを何度も繰り返し、最も効果的な鉱物の混合率を導きました」

このPHTをポリエステル樹脂に混ぜ込んで繊維化することに成功。そしてPHT入り繊維を20%編み込むことで疲労回復効果のある布ができあがった。研究を始めてから開発までに2年間かかっている。後述するがそれからリカバリーウェアが誕生するまでにはさらに3年が必要だった。

2013年にドイツで開催された世界最大のスポーツ用品見本市「ISPO」の商品コンテストで「革命的なスポーツギア(衣服)」と評価され、日本企業として初の最高賞を受賞した。それを受けて、ドイツ語圏での販売を開始したことは前述したとおりだ。