それでは視神経の障害と大きく関わる眼圧とはどのようなものなのか。
熊本大学大学院の谷原秀信教授が次のように説明する。
「眼圧とは、目の内側の圧力、簡単にいうと“目の硬さ”のことです。眼圧は『房水』という透明な液体によって一定に保たれています。房水は『毛様体』で産生され、『虹彩』の裏側を通って、虹彩の根元にある『隅角』から排出されます。この隅角が目詰まりを起こしたり、狭くなったりすると、房水がうまく排出されずに目の中にたまります。その結果、眼圧が高くなるのです」
ところで緑内障にはさまざまなタイプがあるので、簡単に説明しておこう。まず大きく、ほかに原因になる病気がなく発病した「原発緑内障」、ほかの病気が原因になって発病した「続発緑内障」、生まれたときから発病した「発達(先天)緑内障」の3つに分類される。さらに「原発緑内障」は開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障の2つに分けられる。一般的に緑内障といえば原発開放隅角緑内障で、日本人に最も多い正常眼圧緑内障はこれに含まれる。
長い時間をかけて徐々に進行し、視野が欠けていく原発開放隅角緑内障について谷原教授はこう警告する。
「初期には自覚症状はほとんどありません。これは、片方の目の視野が欠けていても、もう片方の目が視野の欠けた部分を補うため、普通の生活には不便を感じないからです。しかも緑内障の場合は真ん中の視野が最後まで残るので小さな文字が読めるため、筒をのぞいたような視野になっても緑内障に気がつかず放っておく人も多い。両目の緑内障がかなり進行してから、初めて視野の異常や視力の低下に気がつき、医療機関を受診するということも少なくありません」
(矢木隆一=撮影)