IMF管理で消えた“日本通”

ところで、国民の好悪感情という点では、日韓関係と同様に悪いのが日中関係です。日中間にも常に大小の摩擦が起きていますが、どこかで政治的な手打ちが行われ、深刻な対立には至らないのが普通です。それは1つには、中国が民主主義国ではないからです。

共産党の一党独裁が続く中国では、政治家が選挙を気にする必要はありません。自国民の支持を得ることより、日本政府との外交関係を念頭に発言や行動を決めることができます。この点が韓国政府との大きな違いです。

民主化に加え、近年の韓国の経済状況の変化も、対日関係に影響しています。97年に発生したアジア通貨危機により、韓国は国際通貨基金(IMF)の管理下に入り、市場主義が徹底されました。同時に産業界の再編が進められ、結果としてサムスン電子や現代自動車などが世界的企業に成長します。

問題は、このころを境に韓国政府の中で日本通の人材の影が薄くなり、米国通の官僚が幅を利かせるようになったことです。これにより、政府間の意思疎通が難しくなってしまいました。

さらに、00年代に入ると、韓国の対外貿易における中国のシェアが急上昇し、第1位の貿易相手国となります。一方、日本のシェアは10%前後まで低下します。これで「日本軽視」の流れができあがってしまうのです。