最短ルートから外れることを過度に恐れる

人は誰しも、自分の人生しか知らない。常に最短距離を選んで歩いてきた人は、あえて回り道をして思わぬ感動に出合うような人生の楽しみ方を知らない。たった一度でも回り道をしてしまったらおしまいだと思ってしまう。

たいていの場合はどこかで回り道を余儀なくされ、その道程で思わぬ出会いに恵まれ、最短ルートを行くだけが人生じゃないと悟る。そこから人生の視野が広がり、味わいが深まる。しかし幸か不幸か常に最短ルートを進むことができてしまった人は、最短ルートから外れることを過度に恐れる。子供ができれば、子供にも最短ルートを歩ませなければいけないと思い込んでしまう。これが、高学歴の親が陥りやすい心理だ。

自分の知らない道を歩ませるのは怖いから、わが子にも自分と同じ道を歩かせたいと望んでしまう。そうやって自分の恐怖をわが子に引き継いで、自分だけ安心しようとする。しかし親の恐怖を引き継いだ子供もまた、恐怖を感じながら人生を歩まなければならなくなる。高学歴は手に入れられるかもしれないが、常に不安な人生だ。それが本当に子供のためだろうか。親自身が、恐怖心から逃れたいだけである。

学歴コンプレックスがあるにせよ、高学歴ルートから外れるのが怖いにせよ、人生の成功を学歴にとらわれているという意味で同じだ。コインの裏表でしかない。「学歴がないとまともな人生を送れない」という恐怖心を植え付けることで子供をコントロールしようとする。それがこのタイプの教育虐待の基本構造になっている。