つながりをデザインする

【野村】イノベーションは発想するだけではだめで、最終的に形にならないと意味がありません。そのためには行動が伴うかどうかというのがすごく重要です。

【神田】行動を起こすのは誰かと言えば、会社でいえば社員です。そうすると、社員のコミュニティ作り、いわゆるつながりをどうやってデザインしていくかが鍵になると思うんです。イノベーションを起こすために、人と人のつながりをどうデザインするか。そのためにはそこにいる人の不満をまず聞く、そしてそれを解消するかたちで、うまくそれをポジティブな方法に持っていかなくてはならない。だからファシリテーションといってもオフシャルな場でやるものだけではなく、飲み会までも含まれたものに形成していかないとイノベーションというのは起こせないんじゃないかと。

『イノベーション・ファシリテーター』(野村恭彦著、プレジデント社刊)

【野村】そうですね。ただ会社の規模が大きくなると、一部署におけるつながりのデザインが他の部署とつながっていないことがありますよね。

【神田】それまでの感情的な反発などもあって部署同士が対立したりしているケースですね。そうするといくつかのグループを同時並行で動かして、つながりをつくれたところを中核にしながら、次々に亀裂の入ったところをうまく修復していくという作業も発生します。これは大変なことなんですよ。

【野村】組織の力を強めていくうえで、イノベーション・ファシリテーターの必要性が問われる部分でもありますよね。

【神田】非常に複雑なプロセスであるということを、企業のトップにも理解してほしいと思います。トップが理解しているのとそうでないのとでは、進むスピード感に大きな差がでますから。これは企業だけじゃなくて、自治体でも同じです。イノベーションのプロセスを動かすには専門性とリーダーシップが必要です。つまりイノベーション・ファシリテーターとトップのコラボレーションがものすごく重要なんですね。