──では、日本や日本企業はどういう分野に目を向ければよいでしょうか。

本質的な世界の問題に目を向けるときだと思います。金融危機が起こっても地球の温暖化は止まらないし、FRB(米国中央銀行)がいくらお金を刷っても原油の供給は増えません。

日本企業には、人類が抱える大きな問題、環境や食糧、エネルギー、高齢化などにぜひ取り組んでほしい。日本企業にはその資質がありますし、こうした分野で成果を挙げた企業が、将来の勝ち組になると思います。

私が考える日本の強みは、金融ではなく技術や開発力です。円高が不況をもたらすと言われていますが、昨年前半頃まで、輸出が伸びて日本の景気が好調だった原因は、円安ではなく、日本の高い技術にあったのだと私は思っています。だから、今後はそれを生かして環境問題などに取り組むことを考える。長期的な視野に基づけば、できることはたくさんあると思います。

たとえば、日本のアニメーション制作やゲームソフト開発の技術を教育分野に応用すれば、効果的で効率的な教育メソッドが生まれるかもしれません。個人的には、ウォシュレット(温水洗浄便座)なども海外にもっと広がってほしい。日本の金融機関がこれから世界で活動するのであれば、日本企業の持つ環境技術の話が海外に伝わりやすいといった相乗効果も期待できます。

また、将来性のある企業を見つけて、今のうちに投資するのも悪くない。世界的に株価が下落して、投資や株そのものが危ないといった見方が広がっているようですが、日本株に関しては、PERなどの指標を見る限り、今かなり割安ですから、キャッシュを持っている人は逆に買い時だと思いますよ。

(澁谷高晴=撮影)