「売上高2兆円」社長自らに課した命題
サントリーが国内飲料市場で“天下獲り”に打って出る。グループ中核の飲料事業会社、サントリー食品インターナショナルを率いる鳥井信宏社長が、「2020年度に売上高2兆円」の構想をぶち上げたからだ。それはとりもなおさず、トップを走る日本コカ・コーラグループに対する“宣戦布告”を意味する。同時に、創業家出身の鳥井社長にとっては、次期グループ総帥、すなわち、持ち株会社のサントリーホールディングス(HD)の経営トップを目指し、自らに課した命題に違いない。
「総合的な飲料サービスの提供体制を整え、2020年度に売上高2兆円を目指す」――。鳥井社長は5月25日、サントリー食品が日本たばこ産業(JT)の飲料自動販売機事業買収を発表した記者会見で、こう言い放った。サントリー食品の売上高は14年12期で1兆2572億円だ。JTが飲料事業の撤退に伴いサントリー食品に手放す飲料自販機事業子会社2社の売上高合計は約1600億円であり、構想実現に向けた地ならしに映る。
これにより、国内飲料販売量で第2位のサントリー食品は63万台の自販機を抱え、83万台を擁する日本コカを追い上げる体制を整えた。サントリー食品はJTの自販機事業に加えて、JTが持つコーヒー飲料「Roots」、清涼飲料「桃の天然水」の2ブランドについて、約1500億円を投じ7月をめどに買収する。
買収額は取得するJT2子会社の合計売上高とほぼ同額であり、「高い買い物」との指摘もある。しかし、サントリー食品はこれまで主に自販機ベンダー(オペレーター)を通じて飲料を販売しており、自前の自販機事業を持つ意味は、競争が激化する一方の飲料市場で勝ち残りに向けた大きな要素となる。