中盤●「言うより聞く」「結論を出さない」が鉄則

なぜゴミ箱の上に座るのか

対面した相手と距離を縮めるために、私は目線の高さを合わせて話をするように意識している。たとえば、私が社員の職場へ行って話をしようとすると、相手はこちらに合わせて立ち上がろうとするだろう。これでは目線の位置が違ってしまう。そこでデスクの脇にあるゴミ箱に座って話をする。そうすると椅子に座っている社員とちょうど同じ目線の高さになる。

笑顔も大切だ。やはり難しい顔をしていたら雑談はできない。そして自分がオープンであるという姿勢を伝えるのだ。

社員、部下に対しては、自分が話をするより相手の話を聞くことが大切だと考えている。「最近、何か困ったことはないか?」「おもしろいことはないか?」と話を切り出すことが多い。

そのとき「何でも言ってみなさい」と言いながら、話を聞いた後に相手をバッサリやってはいけない。そうしたら、次からその人は口を開いてくれないだろう。

上司から怒られてしまうと、部下はなかなかものを言わなくなってしまう。つい叱りたくなるような話でも、いきなり「おまえ何を言っているんだ!」とはやらず、「そんなことがあるのか」「私にはよくわからないが、いったいどういう話なんだ?」という具合に聞いてあげるほうがよい。我慢してオープンな気持ちで聞くことである。

私は逆に、何も言わなくて叱られた経験がある。相手は当社の社長だった樋口廣太郎(故人)さんだ。「何か困っていることはないか?」と聞かれたので「ありません」と答えたら「部長だったら困っていなければおかしい。困っていないのは仕事をしていない証拠だ」と言って(笑)。