壮年・熟年世代の夫婦には、40代なら40年余、50代でも30年ほどの余生が待っている。50代の夫婦で子どもがいれば、多くの場合、子育てが終わる前後の時期であり、家のローンがあっても残債はかなり減ってきた頃だ。仮に出口を失って夫婦関係が煮詰まっていたとしたら、夫か妻のいずれかが離婚を考えるうえで、それまでよりは精神的に身軽さを感じられる時期でもある。
とはいえ、20~30年間の歳月をともに連れ添ってきた夫婦が他人として別々に生きていくとなれば、相応の覚悟と勇気、準備と決断を要する。純子さんの場合も、子育てがほぼ終わりかけ、やっと連れ合いとともに何かできる時期に入ろうとしていた矢先のはずだが……。
「離婚の1年くらい前に、同居を望んでいた私の母を夫の意向で結局、老人ホームにやることになったんです。入居だけでかなりの出費でしたから、それまでの蓄えもずいぶん目減りしました」(純子さん)
しっくりいかなくなってきたのは、その頃からだという。
「夫は若い頃から、何か気に入らないと子どもの前で舌打ちするんですよ。信じられますか?(笑)もともと私への態度とか話し方は部下に接するような感じでしたが、母の件を境にそういうのがいちいち気に障るようになってしまったんです。失望したのかな。長女は『別に離婚もいいんじゃない』って……未練、ですか? う~ん……友達とよく冗談半分で話すんですが、パソコンのデータに例えると、男性は好きな女性を“別名で保存”するでしょ? でも、女は“上書き保存”。前のデータは残さない(笑)。ただ、時々会って食事している娘の話では、夫が毎日の生活でいろいろと困っているみたいだし、またヨリを戻してもいいかなって思ったりもしています」(同)