純子さんが「そのときは……」と言葉を切ったのは、受け取る年金の仕組みを当時の彼女がよく理解していなかったからである。旧友の話の直後に制度を少し調べると「話し合いで決める」とあったため、仮に自分が離婚を切り出せば、夫が2分の1もの按分を認めるとは思えなかったのだ。そのことをまた旧友に相談した彼女は、「3号分割」を知る。
「専業主婦なら半分と決まっているはずだと言うんです。私の場合、2分の1は決まっているんだって。すぐ役所へ行って確認しました(笑)」
ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんがこう指摘する。
「08年4月以降の婚姻期間の厚生年金については、専業主婦(第3号被保険者)に限り、夫の合意なしで半分が、妻の老齢基礎年金に加算されることになっています。これは“強制的”なんです。いわばどんな悪妻にも絶対に2分の1を渡さなければいけない。しかも、これには時効がありません。3号妻は怖いぞ! と(笑)。ここを男性はよく理解しておかなければいけません」
11年2月に離婚した純子さんの場合、それまでの分割年金に3号分割の分が加算されるが、08年4月以降の厚生年金を対象とするその該当期間は3年に満たない。離婚した夫にとっては逆に「強制分割が3年弱で助かった」わけで、純子さんのほうは少し落胆気味だ。年金の離婚分割は、離婚の時期と婚姻期間や制度施行の時期などを照合しつつ、自分たちの事情にどうあてはまるかをよく考える必要がありそうだ。