表を拡大
(右)肝臓機能セルフチェック(左)ドック受診者の25%が軽度の肝機能障害

一方、血液を介して感染するのがB型、C型、D型肝炎ウイルス。なかでも気をつけたいのが慢性化しやすいC型だ。感染すると60~80%が慢性化し、C型肝炎になる。そしてその約半数が肝硬変に進行する。またB型のように感染予防のための有効なワクチンがないのもC型肝炎の怖いところ。他人の血液にふれないことが最大の防御だが、もし思い当たるフシがある場合は、HCV抗体検査を受けることが望ましい。

次いで多いのがアルコールによるもの。いうまでもなく飲みすぎが原因だ。飲酒がすぎるとまず脂肪肝となり、さらに飲酒を続けていると肝臓が炎症を起こす。この段階で飲酒をやめれば短期間で改善するが、過度な飲酒が続くとアルコール性肝炎、肝硬変へと進んでいくのである。

肝機能検査の基本はALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTP。AST、ALTは肝臓の細胞に多く含まれ、細胞が壊れたときに血液中に出てくる酵素だ。したがってこの値が高いことは肝臓の細胞が壊れていることを意味する。また、数値だけでなく、どちらがより高いか(AST/ALT比)も大切。AST値よりALT値が高い場合は慢性肝炎、ALT値よりもAST値が高い場合は、肝硬変、肝がんの可能性があるからだ。

そして飲酒による肝障害の指標になるのがアルコールの分解に反応する酵素、γ-GTP。「新基準値」では、従来の基準値が0~50U/リットルであったものが、男性12~84U/リットル、女性9~40U/リットルと緩和され、男女差も大きくなった。

「従来の数値とかなり差があるので、疾患が見過ごされる危険性もあります。新基準内の数値であっても過信せず、飲みすぎを控えるなど、生活習慣の改善を心がけることが重要です」(工藤医師)

ウイルスが原因の肝硬変と異なり、アルコール由来の肝硬変は自分の意思で未然に防ぐことができる。過度な飲酒を控え、規則正しい生活を心がけることが何よりの予防策だ。