わたしにメールを下さった読者にも、「気持ちを切り替えた」という、末期のがんの方がいます。40代後半で、甲状腺がんを患うその女性は、肺や全身の骨に転移があります。自宅で、不安にかられながら、テレビを見たりしてなんとなく過ごしていた、といいます。
彼女も、発売からほどなくして、本書を手にしました。もっとも彼女の感想は、たしかにすごい。でもこんなこと、自分にはできないだろう、というものでした。
この本に登場する、劇的な寛解を遂げた人たちの実話には、すごく励まされた。でもわたしには、この人たちがやっているような瞑想なんてできない。食事の改革も、ここまでは――。
けれどもわたしと1、2往復のメール交換をするうちに、気持ちが変わった、といってくれました。「こんなのできない、これも無理、じゃなくて、できることからやっていこう。こう思うようになった。やってみます」。このように、自分の現状をとらえる視点の方向が、がらっと変わったといいました。
連絡をいただいたのは、当事者からだけではありません。意外なことに、医師の方々から「とてもよかった」と感想をいただきました。現場で生身の患者に寄り添おうと考えるお医者さんには、わかっていたのです。本書が明らかにした「寛解した人々が共通しておこなっていた9つの実践項目」が、どれだけ、結果である治る、治らないに関わらず、「生きるため」の原動力になるかが。
ただ、それを一つ一つ、患者に説明して、伝えることができなかった。だから、こうして文字にしてまとめてくれて、それをわかりやすく翻訳してくれてありがとう、といってくださるのです。
翻訳で、かなり体力を消耗しました。でもやってよかった、これこそ9項目の9つめ「どうしても生きたい理由を強く持つ」の実現だな、と自分では思っています。
※この記事は2015年3月2日掲載「ふくしまニュースリリース」の連載コラムを著者と媒体運営会社、ライクス(http://www.like-s.jp)の許可を得て転載したものです。
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。2010年8月に『ガサコ伝説『百恵の時代』の仕掛人」(新潮社)を刊行、10月よりシアトル在住。2013年からは日本とシアトルを行き来しながら取材執筆を続けている。