熱狂的なファンを育てる法

出張の際にはキャリーバッグに本を詰めて運び、出張先でも読書。経営書がぎっしりと詰まっている。

そうした中で出会ったのが、あのP・F・ドラッカーのマネジメント理論にほかならない。彼の理論をもとにすると、起業に際して明確にすべきは3つ。すなわち使命、コンセプト、そして戦略だということに目を開かされた。もし、開業しても、なかなか成功しない店があるとしたら、この要素が足りないのではないかと考えるにいたったのだ。

つまり、何のために開業するのか、どんな店にしたいのか、どうやって繁盛させるのかをはっきりさせる。そのうえで、しっかりしたマネジメントをしていくことが求められると気づいたのだ。

それまでは大和製作所は製麺機を製造・販売する会社というつもりでいた。しかし、顧客が望んでいるのは製麺機を買うことで得られるメリットなのだ。それならば、当社は製麺機を納める以上の、もっと本質に迫るサービスを提供していこうと決意した。

もっと本質に迫るサービス、それは麺専門店の繁盛をサポートするということだ。そのためには、顧客以上に、我々が勉強し、成長しなければならない。もはや1日の停滞も許されないと覚悟を決めた。

そのための実践が大和麺学校であり、直営うどん店「亀城庵」の開業であり、創業38周年を記念して創刊した「YAMATO通信」だ。これらを通して、私は麺業界に革新の嵐を起こしていくつもりだ。

麺学校では私の講義もあるので、周到な準備が必要となる。現代は社会が変化していくスピードが速い。だから、常に新しい情報のインプットを心がけなければならない。最低でも毎日2~3時間はインプットする時間をつくっている。

そうした勉強の中で、最近、CS(カスタマー・サティスファクション=顧客の満足度)とCL(カスタマー・ロイヤルティ=顧客の愛着度)について思索するようになった。顧客に満足してもらうことは当たり前のことだが、そこからさらに深く掘り下げて、当社に愛着を持ってくれる“熱狂的なファン”になってもらうことが大事だと思っている。

実は、それを成し遂げていくにはES(エンプロイ・サティスファクション)、すなわち従業員の満足が必要となる。やはり、社内が仕事のやりがいに燃え、活力に満ちていなければ、顧客を巻き込むこともできない。このことは、いずれの企業にとっても永遠のテーマといっていいだろう。

30歳を前にしての徒手空拳での起業。およそ40年間の経営者人生を振り返ると、充実した大変貴重な学びの時代だった。そして、その勉強は現役である限り、一生続いていくことは間違いない。

大和製作所社長 藤井 薫(ふじい・かおる)
1948年、香川県生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。75年に退職、大和製作所を創業。小型製麺機の業界トップシェアを誇る。2000年にうどん学校、04年にラーメン学校とそば学校を開校し、起業支援を行っている。
(岡村繁雄=構成 的野弘路=撮影)
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