【田原】日本でうまくいった経営者は、孫さんにしろ、三木谷(浩史)さん、柳井(正)さんにしろ、みんなワンマンじゃないですか。
【吉田】私は東日本大震災で、人の意識が変わったと思っています。自分を守ってくれるのは会社やお金ではなく、結局、家族や仲間、地域の人たちだということに多くの人が気づきました。つまり震災を境に、貨幣ではなく人が中心になる社会に変わった。貨幣を中心とした社会では、ワンマンがお金で押さえつけるような経営も可能だったでしょう。しかしこれからは一人一人が納得いく働き方ができているのか、納得いく仲間と働いているのかというところに光を当てないと、いいパフォーマンスを生まないと思います。その意味で、チーム経営が大事なのです。
【田原】チーム経営だと、吉田さんは経営にどうかかわるのですか。
【吉田】いま私は現事業に関する会議にはほとんど参加していません。現場の力だけで100%決めます。
【田原】それでうまくいきますか。
【吉田】カーネギーホールと契約しているオルフェウス室内管弦楽団という楽団があるのですが、そこには指揮者がいなくて、演奏者同士で話し合って音楽をつくります。これで40年続いているそうですから、経営も同じことができるんじゃないかと。
【田原】猪子(寿之)さんのチームラボも同じですね。ただ、指揮者がいらないとすると、吉田さんもいらないんじゃない?(笑)
【吉田】はは、そうですね。実は3年後から必要な事業に対して、人の採用をしています。3年後まではいまのチームでできるので、その先に必要なものを考えて動いています。
【田原】わかりました。今後も期待しています。頑張ってください。