学歴とキャリアは比例しない

大学ごとの差でいえば、東大出身者は、本社の人事や調査、企画関連の部署が多いのだという。早慶や明治は、地方の支社などにかなりの数の人が行くようだ。

「私もそのひとり……。ここで“俺はどうせ、こんな扱いなんだ”と思い込む。これが、アウトなんですよ。実際、20代後半ぐらいよりも上の世代になると、上司の評価や実績などの要素が大きくなる。30代半ば以降は、学歴よりは実績最重要視でしょう。結果を出せば、明治でも認められますよ」

30歳を目前に、東京本社の営業部に異動を命じられた。この時点で、地方支社に行くことになると、出世競争では大きなハンディを背負うのだという。本社に戻ることには前々からある程度、手ごたえを感じていたようだ。それ以前に上司から、年1回の査定評価の結果を知らされていた。

「同期生200人の中では、上位1~2割以内に入っていたんじゃないでしょうかね。20代は、ザ・サラリーマンをしていました。仕事が好きでしたね。仕事をすることができれば、大きな不満はなかった。今、振りかえると、"ここまでするか?"と思うほどにお客さんにサービスをしていましたね。契約額は、同世代の中でもかなり多かったんじゃないでしょうか」

31歳のとき、会社を辞めて独立をする。当初はひとりだったが、早いうちに人を雇い、本格的な組織にしていこうと考えていた。多くの創業経営者がぶつかり、息絶えていく「売上10億円の壁」を突破した。リーマン・ショック(2008年秋)以降の不況も乗り越え、業績は上昇している。だが、この10数年を「平坦な道ではなかった」と振り返る。

「起業は、そんなに楽なものじゃないですよ。大企業や金融機関などから支援を受けていたわけでもないですからね。学歴? もう、関係ないですね」

社員を採用する際には、中途採用に重きを置いている。学歴よりはキャリアを重視している。学歴とキャリアが比例しているとは思えないことが増えている、という。

「反比例することはあっても、比例しているとは言いきれないですね。エントリーされた人の中には、例えば、難易度の高い大学を卒業し、金融機関に入ったものの、心の病になり、退職された人がいます。

その人は、その後、新たに会社に入ったようですが、病が再発し、辞めたということでした。その流れで、当社の採用試験を受けようとされたみたいです。一定の学歴を身に付けていても、最近はこういうメンタル面の問題を抱え、十分には仕事ができない人が目立ちますね」