利他的な起業家は燃える目をしている

新潟市古町の愛宕神社、口之神社にて行われた明和義人祭に宮司として参加する池田氏(右上は2009年、左は2011年)。

では、相手の何を見れば信用できるのかといえば、それは「気」です。空気、雰囲気、活気……。日本語には気がつく言葉が大変に多くありますが、心にやましいところのある人物は、必ずやましい雰囲気を醸し出しているものなのです。八百万の神はお見通しであることを、自分自身で感じているからでしょう。

ですから、じっと目を見てこちらを見返してくる瞳にやましさがなかったら、とりあえず人間としては信用していい。反対に、どれほど周到な事業計画書を持ってきたとしても、どこかやましそうな雰囲気を醸し出していたら、絶対に信用してはいけない。こうした感覚は、何人もの起業家に会っていくうちに、自然と磨かれてくるものです。

さて、相手が少なくとも信用の置ける人間であることがわかったら、それで投資を決めてしまっていいのかといえば、ことはそう簡単ではありません。ベンチャー企業の経営には、次々に難題が降りかかってきます。しかも、本気で会社を大きくしようと思えば思うほど、課題は大きなものになっていくのです。

次々に襲いかかってくる困難を乗り越えるには、いったい何が必要でしょうか。潤沢な資金、優秀な人材、斬新なアイデア……。いずれも重要なことは間違いありませんが、こうしたものをいくら豊富に取り揃えたところで、ベンチャーが成功するとは限りません。

一番大切なのは、起業家の志です。起業家がどんなレベルの志を持っているかが、最も重要なのです。自分さえ食べていければいいというような、志とはいえない「動機」レベルの場合もあるでしょう。一方で、日本を幸せな国に変えたいというような高い「志」もあります。どんなレベルの志を持つかで起業家の目つきや雰囲気はまったく変わります。言うまでもありませんが、大きな目標、しかも利己的でない、利他的な大きな目標を持っている起業家ほど、燃えるような目をしているものなのです。そんな人材に出会うと、こちらも「おっ、こいつは見どころがあるな」と思うわけです。