3つの施設のシナジー効果で存在感

BASFについては、今さら説明するまでもないが、今年創立150年周年を迎えた総合化学メーカーで、その製品ラインは化学品、プラスチック、機能性製品、農業関連製品、石油・ガスと多岐にわたっている。売上高は10兆4300億円と、化学会社の中では世界最大規模で、三菱ケミカルホールディングスの約3倍を誇る。

新しく導入した装置でつくった自動車部品の試作品。

もちろん、その技術力は高く、これまでに数多くの製品を開発してきた。そのうちの一つが今回日本市場に売り込もうとするウルトラミッドだ。これは各種コポリマーをベースにした成形用樹脂で、金属の代替品として開発された。その特徴は強度、剛性、耐熱安定性に優れ、さらに低温下での耐衝撃性、摺動特性や成形性にも優れているという。

特に自動車を軽量化するには最適な製品とのことで、既存の金属をウルトラミッドに置き換えると、約50%も重量が削減できるそうだ。用途範囲も吸気モジュール、エンジンカバー、オイルフィルター、バルブボンネット、シリンダーヘッドカバーなどと非常に幅広い。

その結集とも言えるのがBMWの電気自動車「i3」で、BASFは多彩な樹脂製品を供給したのをはじめ、多岐にわたる製造ノウハウで部品開発をサポートした。BASFの技術がなければ、BMW「i3」は完成しなかったと言っても過言ではないのだ。

しかし、日本でのシェアは「言えるレベルではない」そうで、現在、アジアの自動車メーカー4社と協業する程度に留まっている。BASFでは、今回のアジア・コンポジット・センターのオープンをきっかけに、エンジニアリングプラスチック技術開発センターやデザインファブリーク東京とのシナジー効果を発揮させながら、日本での存在感を高めていく作戦だ。

「自動車メーカーや部品メーカーなどいろいろな企業とオープンに関係を築いていきたい。そして、コスト、軽量化、安全などの性能の3つそろった形で、お客様に新しいソリューションを提供しようと考えている」とストルトン執行役員は強調する。これからBASFの日本での動向に目が離せなくなりそうだ。

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