背を向け続けた横綱
いったい、どうしたのだろう。大相撲の春場所で横綱白鵬が6場所連続の優勝を果たし、自らの持つ優勝回数の史上最多記録を34に伸ばした。場所中の15日間、白鵬は支度部屋でメディアに背を向け続けた。
もちろん、大相撲に限らず、スポーツ界でも、選手には「言論の自由」がある。何も語らないのも、その内に入っている。でも、メディアに沈黙を通すということは、相撲ファンにも心中が伝わらないことになる。
何が白鵬をここまで意固地にさせたのか。初場所の千秋楽翌朝。横綱が口にした「審判部批判」をメディアはこぞってネガティブに伝えた。さらに言えば、横綱が言ったことを誇張して記事にしたメディアに不信感を募らせたからだともいう。
だいたい問題となった取り直しの一番。日本語を母国語としない白鵬の言葉使いはともかく、取り直しが妥当だったのかどうか、その一番を検証したメディアはあったのだろうか。審判とて人間だから、判断は絶対ではない。
白鵬は春場所の優勝直後、土俵下のインタビューには応えた。「いろいろ騒がせましたけど……」と。が、その後の支度部屋ではメディアに何も話しをしなかった。
その夜、優勝力士の慣例として、NHKのスポーツ番組には生出演した。紳士的なインタビュアーからはなぜか、「いろいろ騒がせましたけど」との大事なフレーズについては一切、触れられなかった。
白鵬は千秋楽翌日の「一夜明け会見」には対応した。つまり、優勝力士として、メディアに対し、最低限の義務は果たすといったスタンスだったのだろう。強すぎることもあってか、横綱は日本人ではない疎外感に苦しんでいるのでないか。