労働時間が長くなる理由とは
エグゼンプションの対象者になった人は、労働時間が短くなることはなく、間違いなく労働時間は長くなるだろう。傍証もある。現行法制では導入企業は極めて少ないが「裁量労働制」という制度がある。簡単に説明すれば、労使で話し合って1日の労働時間を9時間に設定すれば、8時間を超える1時間分の手当は出ても、9時間を超えて働いても残業代が出ない仕組みだ。
本来、この裁量労働制の適用者は、自分の裁量で自由に仕事をやることができ、「出勤・退社時間の自由」が原則だ。だが、現実はそうなっていない。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が、厚労省の要請で調査した「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果(労働者調査結果)2014年6月」がある。
調査は「専門業務型裁量性」(専門型)、「企画業務型裁量性」(企画型)、「通常の労働時間制」の3つに分けて、それぞれ1カ月の実労働時間を調べている。それによると、労働時間150時間以上200時間未満が通常の労働時間制の社員では61.7%、専門の社員は42.1%、企画型の社員は49.8%となっていた。ところが、200時間以上250時間未満になると、通常の社員は26.5%であるのに対し、専門型が40.9%、企画型が38.6%となっている。つまり、柔軟な働き方ができるはずの裁量労働制の社員は通常の社員以上に長時間働いているのだ。
しかもこの調査では49.0%の人が「一律の出退勤時刻がある」と答え、40%超の人が遅刻した場合は「上司に口頭で注意される」と答えている(労働政策研究・研修機構2014年6月調査)。
出退勤時間を自由に決められるはずなのに、実態を見れば自由などない人が半分も存在する。エグゼンプションが導入されれば、ほぼ同じような結果になることは間違いないだろう。