誇らしげな運転手、クルマの名は“ペ”ンツ

3月18日にプレジデント社から出版された拙著『ひみつの教養』。新聞やテレビでは報じられないようなニュースのウラ側をどうやって掴み、そして利用するか。そんな方法を身につけることができるような本になったと思っている。

私だって、まったく学歴ゼロ、知識ゼロの人間で、それこそ東大卒、ハーバード大卒のスーパーエリートたちをギャフンと言わせるべく知恵を絞ってきた半生だ。そんな私だからこその方法論をわかりやすく書いたつもりだ。読者の人生に資するものであると信じている。

例えば隣国・中国について、これからどう関わっていくべきなのか。なかなか、メディア報道からは見えにくい。誰もが公式の場では、中国からの反発・嫌がらせを恐れて本音を話さないからだ。

急激な円高、民主党政権に愛想を尽かし、中国へと本格進出した日本企業は多い。しかし、どれだけの企業が収益をあげ、しっかり日本に還元できただろうか。大半の企業は、技術やシステムを取られただけだと、飯島氏は指摘する。(写真=PIXTA)

以前に、上海へ訪れたときのこと。ホテルで私たちを迎えに現れたバスは、メルセデス・ベンツそっくりのマークが付いた、その名も「“ペ”ンツ」。

一目見て違和感があり、唖然として立ち尽くしていると、運転手が車から降りてきて、にこやかな顔で手招きする。その運転手の姿は自信満々でどこか誇らしげな態度であったが、私は、命の危険すら感じ、とても乗るのがイヤだった……。

海外の高級ブランドも、中国に製造拠点をつくると、本物とまったく同じ材料、同じ規格の同じ製品が、100分の一程度の価格で市場に出回り始めてしまう。

外資を招き入れつつも、すべてを模倣する。パクることにのみ慣れてしまっていて、オリジナルのものが何もない。そして、メード・イン・チャイナ(自国産の製品)を、自国民が一切信用していない。

そのあと行ったレストランで、名物の上海蟹を食べようとしたのだが、そこで出てきた蟹は、「地元の人が通うレストランと同様に、安全で美味しい欧州産」で、「上海の蟹など得体がしれなくて食べる気がしない」という。

日本人のノーベル賞受賞者は、物理学賞の10人、化学賞の七人を筆頭に、22人になった。一方、日本の10倍以上の人口がいる中国では、受賞者は平和賞(劉暁波氏)と文学賞(莫言氏)の二人のみ。いまだに科学分野からは出ていない。

真面目な研究開発をどれだけ怠っているかがよくわかる数字だ。