もうひとつがソフト面の接客サービス、日本流のおもてなしだ。開店時の5分間は、入り口にスタッフが勢ぞろいして客を迎える。客にお辞儀をする習慣はベトナムにはない。

初めてで戸惑う客に、にこやかに応対するアテンド部員

「最初はお客様もスタッフが並んでいるので、戸惑っていらっしゃいましたが、それが当たり前になってくると、イオンってしっかりしているね、みたいな評判になってくる。日本のスタイルが、ベトナムの人にとってはサプライズで、ありがたいと感じてもらえているようです」(青野)

開店に際して、メディアを使った大がかりな宣伝はしていない。影響が大きかったのはフェイスブックなどSNSによる拡散だ。通話料が極めて安いベトナムでは、若者層を中心にスマホが急速に浸透していて、普及率は36%と高い。珍しいサービス、品揃えは話題となり、またたくまに広がった。

ただ、必ずしも日本のやり方がすべて受け入れられるわけではない。

「たとえばキャベツなどの野菜。日本なら玉をL・M・Sに選別して並べるのが一般的ですが、こちらでは家族構成に合わせて、自分でチョイスしたいという要望が強かったので、キロ当たりの統一単価にして、無選別で並べるのを基本にしています」(妹尾)

ベトナムならではのオリジナルサービスもある。赤い制服を着た女性のアテンド部員だ。西峠のアイデアで誕生したもので、慣れない店内に戸惑う客に、にこやかに応対するのが役目だ。

オープンまで西峠は「80%はベトナム人がよく知っている、どこでもやっていることでいい。残り20%に我々のサプライズとイノベーションを持っていこう」が口癖だった。

「その20%が日本のスタイルです。たとえば天ぷらといっても誰も知らない。そこで単に押しつけるのではなく、天ぷらってこうだけれど、口に合うかどうかは、実際に食べてもらい、ベトナム流にアレンジして展開しています。逆にいえば、我々はベトナムのことをわかっていない。8割はベトナムのスタッフから吸収したものです。もちろん、その8割にも、ここはこう改善しようというのはありますが、ベースはそういう感じです」(西峠)