社内一体化を狙って公表した部署別ランキング
【三宅】10年5月に英語公用語化に向けたプロジェクトチームが発足したとのことですが、チームはどのくらいの人員だったのですか。
【葛城】80人ほどです。
【三宅】その80人はどのように選ばれたのですか。また、そのチームのリーダーに葛城さんが選ばれたのはなぜでしょうか。
【葛城】80人は、各部署の部長に推薦してもらいました。その際に、選出する人材については「英語がものすごく上手くなくてもいい」と伝えました。このプロジェクトは、楽天グループの全社員が一丸となって取り組むものなので、「社員たちと一緒に歩んでいけるような人が好ましい」と頼んだのです。だから、「正直、英語が得意ではない」という人も少なくなかった。
【三宅】それは意外ですね。
【葛城】私がリーダーに選ばれた理由は2つあると思います。1つは、私自身が年を取ってから、海外ではなく日本国内で、苦労して英語を習得したことだと思います。今も学び苦しんでいるのですが(笑)。もう1つは、人事の仕事を長くやっており、社歴も比較的長いほうだったので、「社員のこと」を知っているだろう、と。三木谷からは「お前は人(社員)を知っているから、何かあったときにフォローしてやって」と言われました。
【三宅】社内の英語力を高めるために、成功事例の共有や、各部署間の競争なども行なったと聞いています。
【葛城】成功事例の共有は一番有効だと思います。上達している社員が、どのように勉強しているのか、どのように時間をつかっているのか、全社員が共有するわけです。一部の人たちだけがうまくやっていても意味がないので、いかに職場全体を巻き込むかがキーポイントなのです。ゲーム性を持たせることで職場全体を巻き込むために、TOEICの平均点を部署別に出して、ベスト5とワースト5を公表していました。
【三宅】ワースト5もですか(笑)。
【葛城】全社員が出席する朝会で月に1度発表します。ベスト5の部署はいいのですが、ワースト5の部署にとっては嫌な行事ですよね。ただ、これは職場全体で取り組んでいるという意識を醸成するために行なっており、決して社員やその部署を辱めよう虐めようといった意図ではなく、職場の上司を巻き込んで、良い意味での競争意識をつくりたかった。楽天社員は元々、競い合うのが好きなタイプが多いこともあったので。