なぜTOEICを指標として使ったのか

葛城崇・楽天グローバル人事部副部長

【三宅】社員一人ひとりの目標点数は、どのように決まるのでしょうか。

【葛城】人事上のグレードに合わせて設定されます。

【三宅】TOEICを指標にしている理由は何でしょうか。

【葛城】3点あります。1つ目は「スキルの見える化」です。「英語ができる、できない」の自己申告では、どのくらいの力量があるのかはっきりわかりません。客観的に、「どのくらいのレベルなのか」を知りたかったのです。どの部署にどのくらいのレベルの人がいるのかが把握でき、それに応じたトレーニングもできますから。2つ目は「モチベーション維持」です。人はスコアが5点でも10点でも上がるとうれしいものです。そうなれば「勉強を続けよう」となる。3つ目はやはりTOEICは試験としてクオリティが非常に高い。ある程度点数を取るということは、英語の基礎力があると言えます。

【三宅】10年当時、社員の英語力はどのくらいだったのでしょうか。

【葛城】そもそもTOEICを受けたことがない、という社員が6、7割だったと思います。

【三宅】英語公用語化は、まずは執行役員の会議から英語になったと聞きましたが。

【葛城】ええ。上から、です。取締役会、経営会議などです。まさに、上から見本を示すようなかたちで始まりました。その後、毎週1回三木谷が経営に対する考え方などを全社に伝える「朝会(あさかい)」が、英語になったのです。

【三宅】当初、取締役会などの会議で、英語を使っているがゆえに、会議の時間が長くなってしまった、あるいはサッと早く終わってしまった、というようなことはありましたか

【葛城】正直なところ、最初のころは皆が苦労していました。なかなか言葉が出てこなかった。だから、英語が得意な人が、不得手な人をフォローするように進行していました。三木谷が質問をして、相手が言葉に詰まると、三木谷自身がフォローすることがままありました。三木谷の「英語公用語化」に対する意欲の現われだと思います。また、会議が終わった後に、英語で記された議事録をメールで流しました。話すことが苦手でも英語を読める人は多く、メールを見て理解を深めることができました。