企業業績の改善には、売上を増やすか、費用を減らすか、どちらかしかありません。売上は外部環境に依存しやすいため、短期的に結果を出すためには費用の圧縮という手立てを取るほうが確実です。費用は、材料費や商品仕入原価、販促費などの「変動費」と、人件費、減価償却費、賃貸料などの「固定費」に分けられます。このうち手をつけやすいのは「固定費」です。なぜなら、例えば商品を生産したり販売したりするときに、「この商品は一つ当たりいくらの原価に抑えれば必要な利益が得られるだろう?」というように、日々の事業活動を行ううえで、「変動費」の圧縮は常に意識されているため、現状以上のコストダウンは容易ではないからです。しかも、「固定費」の圧縮は売上の変動にかかわらず、利益の確保に直結します。多くの企業がリストラを再建策の初手として選択するのは、そんな理由があるからです。

家具や繊維メーカー小売業も評価が悪い

将来推計として、最近の傾向や当社の格付ロジックから考えられることでは、人件費の比率が高い業種、特に建設・工事業や各種のサービス業で、リストラの可能性を指摘できます。ただし建設・工事業においては、現場の人員は変動費的要素が強いため、対象となるのは管理部門など販売管理費に分類される人件費が中心だと考えられます。

業種別の平均利益率では、総合工事業は2.5%、設備工事業は2.6%と決して高くありません。またサービス業では、洗濯・理容・美容・浴場業は0.6%、宿泊業は1.7%、飲食店は1.9%に留まっています。

最新の格付ロジックで倒産確率が悪化している業種では、木材系や家具系、繊維系のメーカーがあります。小売業も倒産確率が高まっていて、特に生活関連商品を扱う会社の評価がよくありません。企業向け商材を扱う会社の倒産確率に大きな変動がないことを踏まえると、個人消費の落ち込みの影響が出ていると分析できます。

リスクモンスターデータ工場 主席アナリスト 川本聖人
中央大学商学部卒業。1999年中小企業金融公庫(現日本政策金融公庫)入庫。2007年独立系サービサーに転じ、債権回収や事業再生を手がける。10年にリスクモンスターへ。格付データの分析・更新を担当。
(呉承鎬=構成 遠藤素子=撮影)
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