その昔、ある全国紙の記者に、こんな話を聞いたことがある。
「この地区では、地方紙の力が強くて、うちは販売部数でとても敵わないんですよ。なにせその地方紙には、『本日 警察の交通一斉取り締まり』という記事が載ったりするんです。それを見たドライバーが、その日だけ繁華街に行くのをやめるんですから……」
飲酒運転防止と言っても、結構名ばかりなんだな、とびっくりしたが、これは言葉を換えればある時期まで、
「飲酒運転禁止なんて、すり抜ければ問題ないんじゃない」
と考えていた人がそれなりにいたことを示している。
『韓非子(かんぴし)』という古典は、「法と権力」によって部下を支配し、組織を運営することを考えていた。しかしこの飲酒運転の話でわかるように、組織にいる人の多くが、
「法律なんて、すり抜ければいいんじゃない」
と考えていたら、結局、いくら上に立つ者が法を振りかざしても、組織は動いてくれない。
では、どうしたら皆が、
「法を守らないとマズい」
と考えるようになってくれるのか。『韓非子』からは、現代にもそのまま活用できる2つのポイントが読み取れる。