笑顔は「私は危険ではありません、あなたに危害は加えません」というシグナルである。心理学でも笑顔効果といって、その人の魅力度を大きく上げる効果がある。だから、顔全体は幼型化しつつも口だけは大きさを保つ。そうすれば、幼型と笑顔は両立することができ、笑顔効果も表れる。
従って、幼型で大口というのが魅力のある女性のタイプの一つの落としどころになっている。たとえば、女優の石原さとみのぽってりとした唇は、幼型と口の大きさを両立させている。笑顔の石原さとみは、そういう意味で“最強”といっていいかもしれない。
女性の大きな口が評価される理由は、ほかにもある。もともと綺麗な女性は、笑顔を見せても魅力の度合いは普段より意外と上がらない。それどころか、時間が経つと見慣れてしまい、表情が乏しいとさえいわれてしまう。逆に、さほど綺麗とはいえない女性が笑顔になると、そのギャップから魅力がぐっと増したように男性には感じる。綺麗すぎる美人よりも、美人でなくても10回見るうち3回くらい魅力を急上昇させる女性のほうが、男性の採点のスコアは高くなるだろう。
今や国民的女優となった綾瀬はるかが、顔貌の端正だったデビュー当時よりやや“崩れた”感のある現在のほうがはるかに人気があるのがその好例だろう。あるいは、男女を問わず「演技派」と呼ばれる俳優に見た目がちょっと崩れた感じの人が多いのも、恐らくこのあたりが理由と思われる。年を取って劣化した顔と、時折見せる笑顔とのメリハリが「円熟の演技」などと呼ばれるゆえんかもしれない。
法政大学文学部心理学科教授 越智 啓太(おち・けいた)
1965年、神奈川県横浜市生まれ。92年、学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授(当時)、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。著書に『美人の正体』『犯罪捜査の心理学』、『法と心理学の事典』(共著)ほか多数。
1965年、神奈川県横浜市生まれ。92年、学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授(当時)、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。著書に『美人の正体』『犯罪捜査の心理学』、『法と心理学の事典』(共著)ほか多数。
(構成=西川修一)