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問題の建築物の北側北面図。敷地面積2万1969.47平方メートル(約6657坪・テニスコート換算で84面分)、延床面積6238.63平方メートル(約1890坪)、地上1階、地下3階の超巨大別荘(個人4~5人での使用)。

県に届け出た建築計画書によると、敷地面積2万1969.47平方メートル(約6657坪・テニスコート換算で84面分)、延床面積6238.63平方メートル(約1890坪)、地上1階、地下3階。個人の別荘というにはあまりに大きく、どうしてこれが個人の別荘として認められるのか、という疑問はぬぐえない。企業の山荘として申請すると近隣への説明会が必要になり反対される可能性もあるが、個人の別荘なら説明会はいらない。そのために個人と言っているのではないか、という疑問を感じさせるほど巨大な建物なのだ。

噂どおりビル・ゲイツだというなら、このピーエムリゾートの存在は何なのか。そして代表取締役の黒川正博なる人物とは?

東京新橋にあるピーエムリゾートの設立は2009年で、10年2月に虎ノ門から新橋へ移転している。会社の業務としては、リゾート開発、不動産業、投資業、金融業などが掲げられている。新橋のピーエムリゾートに事実関係の確認をしたが、期日までに返事はなかった。やはり噂どおりペーパーカンパニーなのだろうか。日本マイクロソフト社に、ビル・ゲイツとの関連を尋ねると、こんな返事が来た。

「ご指摘の土地・建物は、弊社とは一切関係ない。ビル・ゲイツおよびその家族についてはわからない」

(写真上)2012年1月撮影、約6000坪の丘の木を伐採した。 (写真中)13年4月4日撮影、超巨大な屋根が見えてきた。 (写真下)13年6月23日撮影、コンクリート4階建てのビルが姿を現した。今でも着々と工事が進む。

12年6月頃から工事現場は巨大な白いテントに覆われて見えなくなった。テントの中では小山を削っているらしく、土砂を運ぶダンプカーが毎日約100台出入りする。その通り道となったのは、「ロイヤルプリンス通り」と呼ばれる天皇皇后両陛下にゆかりのある道路も含まれていた。近隣に住むYさんは朝早くから夜遅くまで続く騒音と揺れに悩まされていた。「夜9時までミキサー車やダンプが通り、埃もすごくて窓も開けられません」。1年前に別荘を建てたばかりの住民も「こんなことならここに建てるのではなかった」と嘆く。木を倒し、山を削り、土を運ぶ工事は長く続き、13年の春、ようやくテントがはずされて、“4階建て”の大きなビルが姿を現した。計画書どおりなら、これから3階部分を埋めて地下とし、見た目には平屋の建物になる予定だ。

この別荘について、近隣の人たちの声は2つに分かれていた。噂どおりビル・ゲイツの別荘ならこの辺り一帯の価値も上がると歓迎する人がいる一方、建設のやり方に疑問を持つ人も多かった。千ヶ滝西区に40年以上暮らしている別荘族の塚田宏さんは「個人の別荘としての届けであっても、これだけ大きな建物はもはや別荘ではないし、ひと山削るというのは自然破壊の問題がある」と指摘する。塚田さんは別荘ではなく、「シェルター」と呼んでいる。