別荘地として130年近い歴史を持つ軽井沢には、軽井沢の環境と景観を守り、静穏な別荘ライフを維持するためにつくられた「軽井沢自然保護対策要綱」がある。土地利用にあたっての具体的な決まりが記され、建設・不動産関係の業者からは「全国一、厳しい規制」と言われている。この厳しい規制があるからこそ、軽井沢は快適な別荘地としての地位が保たれているともいえる。文面を読むと、この要綱をつくった人たちの軽井沢の自然を大切にする強い思いが伝わってくる。

噂の巨大別荘はこの要綱を守っているのだろうか。大成建設は「法令を遵守している」というが、軽井沢の自然を愛する別荘族や町民には、この工事には納得できないという人が多い。別荘地では建物の高さは10メートル(2階建て)までと制限されているが地下の制限はない。だからといって、小山を切り崩して膨大な土砂を運び出し、4階建てのビルを造り3階までを埋めて地下にして見た目を1階建てとする、このような要綱の盲点を突いたやり方に疑問を感じる。「これでは、帳尻を合わせれば何をやってもいいということだ。自然保護対策要綱の精神を失っている」と軽井沢別荘団体連合会事務局のTさんは、町役場に怒りを向ける。

この工事は「軽井沢自然保護対策要綱」に書いてある、「土地の形質変更及び埋立ては最小限にとどめ、多量な土石の移動を極力避ける」に違反しているとの指摘もある。14年3月、巨大別荘はさらに増築を重ね、工事は15年12月まで続くことに。巨大別荘の工事費は50億円とも80億円ともいわれる。

工事を始めて2年経た今も、なぜ巨大な建物なのか、何の目的に使うのかもわからない。近隣の住民にしてみれば不安なまま、工事が続くことになる。本当の施主が誰なのか、そして、なぜこのような大きな建物が個人別荘として認められたのかを町役場に尋ねた。