2年前、伊藤忠商事から現職に就くことになり、IT関連の書籍を大量に読んだ。その結果、技術の本質を理解するには、技術書よりストーリーのあるノンフィクションが適している、とわかった。
本書は「クラウド」を説明するため、アメリカの工業史を水車から説き起こす。かつて機械化には、水車のように大型で複雑なからくりが必要だった。だが電気の登場で、機械はあらゆる場所で気軽に使えるものになった。そして電気が電力網を通じて発電所から届くように、コンピューティングも「クラウド」を通じて提供されるようになる。
ITの技術用語は難解だが、本書のように歴史的な流れがわかると概念をつかみやすい。希少価値のある一冊だ。