しかし、現在このビジネスモデルで新規に開発されるスーパー銭湯はほとんど存在しないのだという。
「00年代に入って競合が激しくなった。このため各店舗は、客の滞在時間を延ばそうと休憩・仮眠スペースの拡張や飲食施設のフルサービスへの転換を図った。ここ数年では平均で敷地面積2500坪、延床面積750坪程度にまで拡大した。さらにライバルとして登場してきた『日帰り温泉』に対抗するため、温泉の導入を強いられた。現在では約6割のスーパー銭湯が温泉を使用している。温泉の掘削費も上積みされた結果、初期投資額は約7億~10億円に膨張し、回収には10年近くかかるようになった」(岡庭氏)
こうなると、「軽装備・低投資」が武器だったはずのスーパー銭湯は、あらゆる面でかつての健康ランドと大差なくなる。しかし、入館料まで健康ランド並みに上げるわけにもいかない。
現在、多くのスーパー銭湯の入館料は1人600~700円。利用者には1人1000円以内という心理的な壁があるようだ。実際に1000円超という強気の価格設定を行った施設もあったが、想定通りの来客が見込めず、値下げせざるをえなかったという。
さらに、ここ数年の燃料費高騰の影響などから、温浴施設全般も約2年前から下降期に入っている。綜合ユニコムによれば、累計771施設開業(09年内予定も含む)したスーパー銭湯のうち、これまでに114施設が閉店などに追い込まれている。
そもそも水回りの施設は傷みやすく、長くても10年以内に取り替えなければならず、儲けの相当分が吐き出されてしまうという。長期的に見れば決しておいしい商売ではないのだ。
(坂本道浩=撮影)