偽りの希望と真の希望とは

Dr. Kelly A. Turner 
ケリー・ターナー博士

9項目の詳細に入る前に、はっきりさせておきたいことがあります。

まず、わたしは手術、抗がん剤、放射線の「三大療法」を否定する者ではないということです。

たとえ話をしましょう。ふつう、フルマラソンを走るとき、人は靴を履いて走ります。けれどもごく稀に、自分なりのこだわりがあって裸足で走る人がいます。なかには裸足のまま元気に完走してしまう人もいます。

同じように、がんにかかった人は、普通は現代医療に頼るものです。けれどもときおり、ほかの方法を試そうとする人が存在します。わたしは後者に関心を持ちました。何を実践して、彼らは医師の予想を覆す偉業を達成したのか。それを突き止めることがわたしの仕事です。

二つ目に、わたしは本書によって、患者の方々に偽りの希望を与えるつもりは一切ありません。

劇的な寛解をした患者のほとんどが、医師から「ほかの患者には黙っていてほしい」と言われたと告白しています。ひどい話ではありますが、その医師の立場になって考えれば、わからなくもありません。来る日も来る日も、生存の見込みの乏しい患者を診察するのは、想像するだにつらい仕事です。

けれども劇的に寛解する人が現にいるという事実を黙殺するのは、偽りの希望を患者に抱かせるよりも、ずっと罪深いことではないでしょうか。

カリフォルニア大学で、研究方法についての授業の初回に、教授はこう言いました。

仮説から逸脱した事例に遭遇したとき、研究者にはそれを吟味する科学的責務がある。そしてその逸脱事例を吟味してから、研究者がとるべき道は2つ。

一つ目は、なぜ仮説に合わない事例が生じたのかを公に説明すること。二つ目は、その事例を説明できる新しい仮説を考え出すこと。

要するに、仮説に合わない事例は無視してよい、という選択肢は存在しないのです。

がんの克服は人類共通の目標です。現代医療なしで治癒した症例を黙殺することは、科学的に無責任な態度なのです。

次に、「偽りの希望」について検討します。「偽りの希望を人に与える」とは、事実かどうかわからないことや、明らかな虚偽を人に伝えて、希望を抱かせるということです。がんからの劇的な寛解が起きる理由は、いまのところ説明不能ですが、それを体験した人が存在するのは事実です。現代の医学では説明のつかない方法で、彼らは自分のがんを治したのです。