正価販売で稼げる体質に

売り方についても見直す。旧型デミオは性能やデザインは良かったが、量を稼ぐために“安売りしている車”というイメージがぬぐえなかった。その裏にはライバル車である「ヴィッツ」(トヨタ自動車)や「フィット」(ホンダ)、「ノート」(日産自動車)の存在があり、価格を抑えて販売する必要があった。新型デミオでは、それらの車よりもむしろVW「ポロ」やBMW「ミニ」を意識し、価格もガソリン車の約135万円からディーゼル車の約219万円と、コンパクトカーでは高めの設定を行った。

「マツダは今、ブランド価値経営を目指しているが、その一つの大きな施策が正価販売。今回の新型デミオは国内における最量販車種なので、この車でも、これまで新世代商品の中で培ってきた正価販売を実現すべく、またこれを実現すればマツダは大きく変わったなと言えるのではないかという覚悟を持って臨んでいる」と稲本信秀取締役専務執行役員は話す。

この裏には苦い経験があった。マツダは技術力やスポーティな車づくりには定評があるものの、販売力の弱さから大幅値引きやレンタカー用などでの販売量確保を繰り返し、結果的にブランドイメージの低下を招いていた。収益も当然悪化し、国内自動車メーカーとしては最低とも言える営業利益率しか確保できず、円高になる度に赤字に陥っていた。

今その体質からの脱却を図っており、その最大のテーマが正価販売なのだ。幸い、これまで投入した「CX-5」「アテンザ」「アクセラ」と成功している。しかも、どの車種も売れ筋は最高グレードだという。その結果、収益力も大きく向上した。「新型デミオでも同じような傾向になることを期待している」とは原田裕司取締役専務執行役員の弁だが、プレミアムブランドを目指すマツダにとって、新型デミオはその試金石と言える。

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