8月24日、「看取り士」が中心となって第1回「日本の看取りを考える全国大会」(後援・日本医師会、日本尊厳死協会など)が東京・四谷で開催された。看取り士とは、余命宣告を受けてから納棺まで、在宅での看取りを支援する仕事。現在、日本に36人いる。
大会には全国の看取り士のほか、看護師、介護士、僧侶、学者、マスコミ関係者、市民ら約320人が参加。在宅診療の第一人者、長尾和宏「長尾クリニック」院長が「今、なぜ看取り士なのか?」と題し基調講演を行った。
長尾氏は「病院死が世界的に増加傾向にあるが、病院では過剰な延命措置が施され、穏やかに逝く平穏死は難しい」として、在宅死を支える看取り士の役割の重要性を指摘。
また、一般社団法人「日本看取り士会」会長の柴田久美子さんも「2025年には病院のベッド不足から47万人が死に場所を失う。問題解決のため4年前、私は看取り士と無償ボランティアチームによる在宅看取りのシステムを作り上げた」と語り、孤独死対策の一環としても、看取り士の取り組みを充実させていきたいと話した。
日本では1976年に病院死と自宅死の割合が逆転したが、柴田さんによると看取り士の派遣依頼は「人の死に慣れていない家族から」が多い。
「家族が不安だと死に逝く人にも不安感が伝わる。また“死に目にあえないと困る”と言ってご家族が夜も寝られず、うつ病になることも。看取り士は死に逝く人に付き添い、ご家族も支援します」(柴田さん)
現在の介護保険制度は使い勝手が悪く、訪問介護士、看護師が在宅支援できるのは1日のうち4時間ほど。残りの20時間が空白だ。「その時間を支えるのが看取り士。看取り士はケアマネや医師、看護師らと連携して24時間の見守りを実現します」と柴田さん。
今のところ、看取り士のサービスは保険適用外でビジネスモデルができていない。このため看取り士は全員、看護師、介護士を兼職している。多死社会が迫る中、看取り士のニーズが高まるのは必至。ビジネスモデルの確立が急がれる。